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福岡高等裁判所 平成2年(ラ)111号 決定 1990年8月15日

抗告人 上原恒

主文

本件抗告を却下する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一  本件抗告の趣旨及び理由は別紙記載のとおりである。

二  抗告人は、要するに、本件は農地の不動産競売申立事件であって、執行官が誤って、買受適格を有しない者を最高価買受申出人として読み上げたので、原審は売却不許可決定(以下「原決定」という。)をしたが、抗告人は適格を有する買受申出人であるから、抗告人に対する売却を許可すべきである、というにある。

しかし、民事執行法には、民事訴訟法(昭和五四年法律第四号による改正前のもの)六八〇条二項、四項に相当する規定がなく、最高価買受申出人に売却不許可事由があっても、次順位の買受申出人に対する売却許可決定ができるものとはされていないこと、売却手続上、最高価買受申出人は執行官が決定し(民事執行規則四一条三項、四九条)、執行裁判所はこれを受けて売却許否の決定をするものとされており(民事執行法七一条)、執行裁判所が独自に最高価買受申出人を決定できるとする根拠はないこと等、売却手続の構造からして、執行官が決定した最高価買受申出人以外の買受申出人には自己への売却許可を求めて原決定に対し執行抗告を申し立てる利益はない。

三  よって、本件抗告は不適法な申立てであって、その不備を補正することができないことが明らかであるから、これを却下することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 友納治夫 裁判官 渕上勤 榎下義康)

<以下省略>

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